チームで学ぶ!高校生物

“アクティブラーニング型授業”実践、職員研修の記録

1年生のオリエンテーション

昨年の1年生のオリエンテーションのKPシートを見ると、意義とか目的とかを割とガチガチに話していました。赴任してすぐで手探り状態だったこともありますが、もう少し寄り添う形(肩の力を抜いた)で実施してみました。

 

①準備物の確認

 

②担当者の自己紹介KP(2年生で利用したものとほぼ同じ)

 

③授業の基本的な進め方(昨年のKPを利用…一部変更)

 

④グループ内で自己紹介

(1)氏名、(2)1週間過ごして感じていること、(3)好きな生き物とそのエピソード、(4)カタルタを引いて一言、何人かのエピソードを全体でシェア

 

⑤生物を学ぶのは何のため?

(1)個人思考、(2)グループ、(3)全体でシェア

 

〈生徒の意見より〉

・生物がこの先辿る道を知るため

・勉強したいから

・ヒトが他の生き物と共存していくために

・自分以外の何かを理解するために

・生や死と向き合い、神秘を感じるため

・医療の発展に貢献するため

・モノづくりに役立つため

 

⑥生徒の意見も踏まえ、生物の授業の目的をサラリと説明

 

2年目となり、生徒の様子もある程度わかってくるため、場の空気を感じながら、多くの声を拾いつつ進めることができました。

 

グループで考える活動も概ね好評です。

新年度2回目の授業 ~レギュラーの授業について~

単元は「有性生殖」について。まずは、教科書の「山中伸弥先生からのメッセージ」を読んで気になったところや気づき、感想をプリントに記入。その後、クラスで共有しました(LTDを意識)。

 

ここでは「真っ白な気持ちで自然現象と向き合うこと」の大切さについて記入をしている生徒が目立ちました。

 

単元の内容に入る前に、OPPAのシートの診断的評価に相当する問いに答えます。(生物はどのようにして、遺伝的多様性を保っているのだろうか?)また、生物の授業の重点目標を確認し、各自で行動目標を定めました。

 

簡単に意見をシェアした後に、KP法で有性生殖の概要を私が解説。その後、次の組み合わせの語句3つの違いを明確に説明できるようになることを目標に教科書を読み取る活動を行いました。

生殖細胞・配偶子  ②接合子・受精卵   ③ 接合・受精

ここでは、ペアでジャンケンをして、勝ったほうが尋ねるという形式で3回戦おこなっています。

 

同様に、無性生殖の概要をKP法で説明した後に、④分裂・出芽・栄養生殖の違いを読み解き、説明し合う活動を入れました。

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内容を押さえた上で、同形配偶子→異形配偶子→異形配偶子(精子・卵)の方向で進化した理由、さらにゾウリムシが有性生殖をする利点から、なぜ無性生殖ではなく個体の寿命がある有性生殖を選択する道を選んだのかを考察してもらいました。

 

ここでは、個人思考後、グループやクラス全体でのシェアを行います。ここで、学びがグッと深まる感覚を覚えます。また、多様なアイディアが出て来て、生徒と一緒に話していく中で、わたし自身も活動を楽しみました。

 

最後には、振り返りシートで、活動のリフレクションを行った後に、OPPAの診断的評価に相当する部分に、今日学んだことで大切だと思うことをまとめて終了しました。

 

今後、1回目の授業で決まった、パートナー(一人一生き物を選択)の増え方について、単元の前半で調べる活動を入れる予定です。

 

今年度もより良い授業を目指して頑張りたいと思います。

生物の授業開き&深い学びをつくる生物パートナー

今年は次のような流れで授業をスタートさせました。

 

① 教材の確認、テスト返却、宿題の確認(さらりと)

② 自己紹介KP

③ 『生物を学ぶのは何のため?』の個人思考、シェア

④ 生物学を学んだ人同志の対談動画

⑤ 深い学びをつくる生物パートナーの名前が書かれたカードを選ぶ

⑥パートナーについて調べる宿題を提示

 

まず「ある高校生が考えていたこと」と題して、生命に対する問い(なぜ死ぬのか?見事な仕組みを持つのか?進化について)から眠れなくなったエピソードを紹介しました。そして、生物を学ぶことは「生や死と向き合うこと」だと考えるように至り、生物を学ぶ道に進路変更(歴史学より)したことを伝えました。

 

このある高校生が、以前の私のことであることを話し、自己紹介の代わりとしました。そして、「生物を学ぶのは何のため」か、まず個人でノートに記入してもらいました。ここでは、それぞれ自由に書くことを途中で促したところ、次のような意見が出ていました。

 

〈生徒の意見の例〉

  • 自分自身の身体のことを知って、将来病気をしたときなどに役に立つから。
  • 身のまわりの環境について知ることで、より良い活動をすることができるから。
  • 自分の中に学びたいという気持ちがあるから
  • 将来医療系の進路に進んだときに役に立つから など

 

これらをグループおよびクラスでシェアした後、熟達者がどのように考え、感じているのかについて、対談動画を見ました。この中に直接的な答えはありませんが、内容は大まかに次のようなものとなっています。

 

(生物を探究する中で、人知を超えた時間や複雑さのほんのごく一部を切り出し、科学的な小さな知見は得られたが、同時にそこで垣間見たものと得られたものとの間に、とてつもなく大きなギャップを感じた)

 

その後、「生物」(他の教科も含め)を学ぶことは、ものの見方や考え方、生き方に関わることであることを話しました。そして、「人生を支える視点のひとつとして『生物』を獲得して欲しい」と伝えました。

 

わたし自身も大学院時代には、特定の生き物の研究を通して、生物について学びを深めてきました。生徒達にも似たような経験をしてもらうことを意図して、1年をかけて学んでいく生き物を一人一つずつ決めることにしました。参考にしたのは、キエラン・イーガンの『深い学びをつくる』です。

 

モデル生物など生物学の発展に貢献している生き物の名前が書かれたカードを約40種類作りました。最初は裏返した状態で、一人1枚ずつカードを引いていきました。引いたカードによっていろいろな反応があります。

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人数が少ないクラスでは、一人ずつ生き物の名前を答えてもらいシェアしました。人数が多いクラスでは、一人ずつ引いた時点で教師が声に出しながら確認した後、「馴染みがあまり無い生き物だった人は?」「逆に馴染みがある生き物だった人は?」と全体に尋ねて、何人かの生徒から答えてもらいました。

 

この生き物をそれぞれの「生物の学びを支え、深めるパートナー」としました。そして、①名前(和名、英語名、学名)とその由来、②写真もしくはイラスト、③この生き物と生物学との関連について調べてノートにまとめてくることを最初の課題としました。

 

翌日には、さっそくまとめを作っている生徒がいました。ノートを覗いてみると、生物学との関連だけでなく、宗教との関連についても調べていました。今後の展開が楽しみです。

 

【参考文献】

キエラン・イーガン(2016)「深い学びをつくる:子どもと学校が変わるちょっとした工夫」北大路書房  http://amzn.asia/gILLjpq

【米国PBL教科書】アプローチの違い:専門家としての先生 vs ファシリテーターとしての先生

授業および探究活動のあり方を見直すために、アメリカの中等・高等教育の教科書をいくつか読んでいます。この成果も来年度以降の授業に反映させていきたいと考えているところです。

 

そんな中、アメリカの生命科学でのPBLの教師用教科書に教師の立場について分かりや例があったので、訳出し投稿します。ここでは、専門家としての先生とファシリテーターとしての先生が登場し、比較されています。みなさんは、いくつの違いに気づきますか?

 

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【専門家としての先生】
麻衣:先生、「エゾミソハギ」って何ですか?聞いたこと無い。
陽人先生:麻衣さん、いい質問だね!「しるべきもの」リストに加えられそうですね。エゾミソハギは、中西部の湿地帯に生えている植物です。1.8mくらいの背丈で、沼地だと急速に広がる性質があります。
若大:なんでそれが大切なんですか?
陽人先生:あぁ、それはこの植物がもともと、ここに生えているものでは無いからです。それで、この植物がこの地域で普通に見られるようになるんじゃないかって心配している人がいるわけです。
麻衣:わっ!じゃエゾミソハギが他の植物を殺しているってことになるのね!
陽人先生:はい。今日はその写真を用意しました。今話していたことがよく分かりますよ。

 

ファシリテーターとしての先生】
麻衣:先生、「エゾミソハギ」って何ですか?聞いたこと無い。
陽人先生:麻衣さん、いい質問だね!「しるべきもの」リストに加えられそうですね。はい、ではエゾミソハギを知っている人はいますか?
詩乃輔:よく分からないけど、植物じゃない。ガマの話もあったし、そういう植物はここら辺だとよく見るし。
若大:先生、インターネットでエゾミソハギを調べてもイイですか?
陽人先生:もちろん。すぐに分かりそうですね。
武:そこには、いつもお父さんと釣り行っています。たぶんその植物も見たことあると思う。背が高くて、上の方に紫色の花が咲いていました。その植物ですか?
陽人先生:えぇ、おそらく今話しているまさにそれだと思いますよ。
若大:あっ、あった!写真がある。エゾミソハギは、ユーラシア大陸の湿地に分布する植物で、1800年代にアメリカに導入されたって書いてあります。
麻衣:あぁ、いい情報ね。多分エゾミソハギについては、「しっていること」リストにもう移しても良さそうね。
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いずれも優れた先生であることに間違いありませんが、後者の先生は多様な生徒のチカラや経験を引き出すファシリテーターとなっており、登場する生徒も増えています。さらに注目したいのは、ファシリテーターとしての先生は、同時に専門家であることです。よりよい学びの場作りをするためには、ファシリテーションの考え方は確かに必要かもしれませんが、教科の専門家ゆえに出来る焦点を絞った指導や引き出し方、場作りができることを忘れないようにしたいところです。

 

これから増えるであろう対話形式の出題で、先生がどちらの立場で描かれているかを見るのも面白そうだと感じました。

 

【参考文献】

TOM J MCCONNELL et.al. (2016)「PROBLEM-BASED LEARNING IN THE LIFE SCIENCE CLASSROOM K-12」NSTA

https://www.amazon.com/Problem-Based-Learning-Life-Science-Classroom/dp/1941316204

全職員で目指す生徒像を考えるためのワークショップ②~校内ルーブリック研修会~

前回は、全職員でKPT(Keep、Problem、Try)というフレームを用いたワークショップを実施しました。ここでは、日頃感じていることを振り返りながら言語化していただき、グラフィックにすることで見える化を図りました。学校全体から目指す生徒像を探ることを目的としてワークでした。

http://albio.hateblo.jp/entry/2017/10/30/001635

 

今回は、ルーブリック作成を通して各教科で目指す姿を考えるワークを行いました。ここでは、先生方の想いを共有するような場となればという意図もありました。

 

【事前準備】

・前回のワークで作成したファシリテーション・グラフィックを文字に起こし、テキストマイニングでデータ分析を行い、全体像を把握できるようにしておく。さらに、すべての意見に目を通した上で、ループ図で集約し、負の循環が起きている部分など、現在の学校で起きているパターンを見える化しておく。

・先生方には「学習する学校」第5章の実践で紹介してある「観察し記録できる知的成長16の特性」を事前に読んだ上で、教科で伸ばせる・伸ばしたい特性3つを選んで来てもらう。

 

【当日の流れ】(2時間)

①挨拶・前回のワークの紹介(12分)

見える化したものを使って、要点を抑えながら簡潔に説明する。その後、グラウンドルールも確認(自他の尊重、秘密厳守、プロセスを楽しみましょう)

※スクール形式、教科ごとに座る。

②チェックイン(6分)

…名前(ニックネーム)、ワークショップにどう臨みたい?、体調、カタルタを引いて一言

③評価の目的やルーブリックについて解説(20分)

(1) ペーパーテストも含め、テストは本来人を伸ばすためにあることを確認

(2) ルーブリックの特徴を解説後、実際の活用場面と利点・欠点を示すために「インタラクティブ・ティーチング」の動画を視聴(12分の動画の内6分を利用)

(3) シングルポイント・ルーブリックおよび階段状ルーブリックの紹介

④進め方解説・移動(8分)

⑤観点の選択と教科内共有(10分)

…16の特性から3つを選んだ理由を簡潔に教科内全員で共有する。

⑥小グループに分かれる(3分)

…似た特性を選んだ者同士でグループを作る(3~6名程度、マグネットテーブル)

⑦基準作り(45分)

…特性を観点として、その観点において3年生終了時を考え、5段階中の4程度の姿を基準として練り上げる。ここを起点に逆向き設計で2年次、1年次終了時点の基準を同様に練り上げる。この作業を3観点について行う。

⑧全体共有(5分)

…本来は、ここでは、それぞれ作成したルーブリックをもとに、高校生時代を思い出しながら体験会を実施する予定でした。しかし、時間の都合上、全体を見て回る活動としました。

⑨チェックアウト(5分)

…気づき、今感じていることを小グループで共有。

⑪スケジュール説明・総評(5分)

…これからのワークショップ等のスケジュールおよび管理職よりコメント。

 

先生方が大切にしていること、教科が置かれている現状などについても知ることができました。また、各教科で大切にしたい観点も浮かび上がるのと同時に、各教科で共通して多く挙げられる観点(観察可能な知的成長の16観点より)が浮かび上がってきました。各教科で目指したい生徒像を、前回とは違う形で探すことができました。さらに、その要素は前回のワークで作り上げた生徒像を支えるための大切なものであることも見えてきました。

 

今回作成したルーブリックは、生徒の主体性を尊重すること、生徒像を探るという目的で実施したこと、限られた時間での作成ということで、シングルポイントおよび階段状(各学年での到達点)のルーブリックを利用しました。もしブラッシュアップする機会があれば、次のような視点を示したいと感じました。

 

①基準は、実現可能なものなのか?

②生徒の実態にあっているか?

③基準は生徒に伝わる言葉になっているのか?

④基準を実現するための手立ては継続的なものなのか?

 

前回よりとは異なり、関心が似た小さなグループにしたことで、議論もより活発化していたように感じました。ワークを通して、教科間また教科内の差異が可視化されるとともに、3年間継続的に教えられない教科との連携や育む力の見える化など、よい意味での新たな課題も見えてきました。

 

ルーブリックについては図書館の目標設定などにも利用したいという意見が出されたり、教科間のコラボとの話などが出てくるなどよいキッカケにもなりそうな予感です。

 

【参考文献】

Jarene Fluckiger (2010) 「Single Point Rubric: A Tool for Responsible Student Self-Assessment」Delta Kappa Gamma Bulletin, Vol.76(4), 18-25

(ワークショップの土台となる論文で、シングルポイント・ルーブリックが紹介されている)

E.FORUM 教育研究セミナー(2015)「高等学校における探究の評価 高等学校における探究の評価」京都大学吉田キャンパス http://ocw.kyoto-u.ac.jp/ja/opencourse/113

(ルーブリックの基本について紹介するときに利用)

吉田 新一郎(2006)「テストだけでは測れない!人を伸ばす「評価」とは」生活人新書

(今回のワークショップにおける評価についての考え方の根本に置いた本)

鈴木雅之(2011)「ルーブリックの提示が学習者に及ぼす影響のメカニズムと具体的事例の効果の検討」日本教育工学会論文誌35 (3) 279−287

(知人の地理の先生に教えていただいた論文。ルーブリックの効果についてのデータを利用)

東京大学FD(2017)「インタラクティブ・ティーチング ナレッジセッション WEEK 6 学びを促す評価」東京大学 http://www.utokyofd.com/mooc/contents/knowledge/week6

(ルーブリックの運用と、利点・欠点について動画で紹介)

ピーター・M・センゲ(2014)「学習する学校 子ども・教員・親・地域で未来の学びを創造する」英治出版

(5つのディシプリンを利用。また、理知的行動の特性を利用)

体験型学校訪問〜授業デザイン会、授業見学、振り返り会〜

学校訪問として、4名の先生方をお迎えしました。最近は、振り返り会を組み合わせて行うことが多かったのですが、今回はさらに授業デザイン会もセットに実施しました。

 

4時間の滞在でできる限り学ばせていただきたいという強い要望があり実現できました。ありがたいことです。当日の実際の流れは次のようになっています。

 

【日程】

1限目

①挨拶、日程案内

②授業デザイン会(本校職員も自由参加)

2限目

③授業における工夫などを協議(デザイン会の流れより)

3限目

④模擬授業(生物基礎、植生の遷移)

4限目

⑤振り返り会

⑥AL職員研修の概要(看図アプローチ)

 

通常ならば完成した授業をそのままお見せするのが普通だと思いますが、授業デザイン会を通してフラットに授業を練り上げ互いにヒントを得る体験したいと思いがあり9割完成の授業(プリント印刷せず)でお迎えしました。よくやっていた校内研修での型を利用しています。

 http://albio.hateblo.jp/entry/2017/03/27/072906

(校内授業づくり職員研修~校内授業デザイン会、一斉授業見学、振り返り会~)

 

ここでは、ホワイトボードにて可視化しながら、授業づくりを一緒に行っていきます。普段とは異なり、意図やねらいを質問を通して、明確にしていく活動が入りました(自然の流れ)。

 

その後は、今課題と考えていることをオープンに伝え、フラットに意見を出し合いながら進めていきました。

 

1枚ポートフォリオの総括的評価に相当する部分を考える際には、最初は図や写真を使った看図的なものや演習という意見も出されましたが、生徒の持ち時間は5分という中でシンプルに問えるものが良いのでは?ということになりました。最終的には、前回記事にした通り、1文字の変更でそれを達成するという技に至りました。

http://albio.hateblo.jp/entry/2017/10/28/122601

(1枚ポートフォリオ(OPPA)のジレンマを越える2つのアイディア~授業デザイン会の成果として~)

 

参加者と共に新しい境地に進めたことが嬉しかったです。

 

模擬授業でもデザイン会で設定した問いなどもよく機能していました。さらに、振り返り会では、生徒が自ら疑問を持ち、教科書以外の資料を用いたり、必要に応じて教員に尋ねる中で理解を深めていた様子を褒めていただきました。連続してみていると気づきにくい部分まで伝えていただき、嬉しく感じました。

 

最後は、校内で実施したAL研修のスライドを用いて、背景や成果だけでなく、看図アプローチの活用についても共有することができました。

 

わたし自身爽快感が残る、より良い学びの場として学校訪問という貴重な機会を活かせたこと、今後の受け入れにも影響を与えそうだと感じています。

 

1枚ポートフォリオ(OPPA)のジレンマを越える2つのアイディア~授業デザイン会の成果として~

1枚ポートフォリオは、学習前の知識(診断的評価)と各授業での学び(形成的評価)、さらに全体のまとめ(総括的評価)を1枚に残していく手法です。

 

http://albio.hateblo.jp/entry/2016/12/23/075248

(一枚ポートフォリオ評価(OPPA)と思考ツールを活用した導入)

 

とても良い方法でずっと使っていました。上記の記事では、診断的評価を単なる知識不足を確認するだけの活動にしないための工夫について紹介しましたが、さらにいくつか気になる点が出てきていました。

 

①今日のまとめをうまく書けない場合がある(質や量の不足)

②診断的評価と総括的評価で使う「問い」は同じものを用いているため、問いの幅が広くなりがちで焦点を絞るのが難しい

 

①について最初に行った工夫は、教科書会社の指導書にある重要語句の一覧を拾ってきて、授業時のプリントに「振り返りのヒント」として、載せました。これをヒントに言葉を繋がるように説明していくと質や量の確保が出来るというものです。ただし、単元によっては重要語句も多くなる場合もあり、うまく活用できているとはいえない状態でした。そこで、次のように指示をすることにしました。

 

「重要語句から、本単元を説明するために特に大切だと考えるものを理由を考えながら、3つ選び、それらを説明しましょう。」

 

すると、活動が明確になったことから、質や量ともに全体のレベルを上げる活動ができるようになりました。時間があれば、なぜそれを選んだのかというランキングワークを行うことで、思考をさらに深めることも可能だと考えています。

 

②については、なかなか取り組みが進んでいませんでしたが、学校訪問を受けた際に、他校の先生方と授業デザイン会でアイディアを練り合う中で、次のような解決の糸口を掴むことができました。(学校訪問の様子は次の記事で紹介します)

 

それは、同じ問いを利用するが、単元の最後では、少しだけ変化させて尋ねるという方法です。大きく変えると自らの変化が分からなくなってしまうため、必要最小限にする方向で考えていきました。

 

例えば「植生の遷移」の学習を行う際に、『植物は環境からどのような影響を受けているか?また、植物は環境にどのような影響を与えているか?』という課題を出します。すると、単元学習前では、「光や温度の影響を受けて生育している」「酸素を作り出している」などの意見が出されます。

 

「植生の遷移」では、植生の移り変わり、つまり「時間」の概念が大切になってきます(←これもデザイン会で明確に)。これを尋ねるためには、最初の問いのままではやや幅が広く焦点を絞りきれない可能性が出てきます。そこで、授業デザイン会でのアイディアを練り合う内に、次のような問いで尋ねてみてはどうか?ということになりました。

 

『植物は環境からどのような影響を受けてい「く」か?また、植物は環境にどのような影響を与えてい「く」か?』

 

1文字を変えただけで、時間の概念が入ります。この結果、生徒達は、遷移の時間的な流れを記述の中に見事に入れることができていました。

 

これ以外のパターンとしては、【具体的な例を挙げながら】や【3つの例の共通点を明確にしながら】などの補足を加える方法もありだと思います。このとき、単元の中で、何を習得して欲しいかを明確にしておく必要があります(本質を見極める)。

 

1枚ポートフォリオにおける「問いづくりの視点」を手に入れ、新しい可能性と感じています。今後、他の章でも、理解の深まりを可視化できる問いを研ぎ澄ませていきたいと考えています。