チームで学ぶ!高校生物

“アクティブラーニング型授業”実践、職員研修の記録

【米国PBL教科書】アプローチの違い:専門家としての先生 vs ファシリテーターとしての先生

授業および探究活動のあり方を見直すために、アメリカの中等・高等教育の教科書をいくつか読んでいます。この成果も来年度以降の授業に反映させていきたいと考えているところです。

 

そんな中、アメリカの生命科学でのPBLの教師用教科書に教師の立場について分かりや例があったので、訳出し投稿します。ここでは、専門家としての先生とファシリテーターとしての先生が登場し、比較されています。みなさんは、いくつの違いに気づきますか?

 

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【専門家としての先生】
麻衣:先生、「エゾミソハギ」って何ですか?聞いたこと無い。
陽人先生:麻衣さん、いい質問だね!「しるべきもの」リストに加えられそうですね。エゾミソハギは、中西部の湿地帯に生えている植物です。1.8mくらいの背丈で、沼地だと急速に広がる性質があります。
若大:なんでそれが大切なんですか?
陽人先生:あぁ、それはこの植物がもともと、ここに生えているものでは無いからです。それで、この植物がこの地域で普通に見られるようになるんじゃないかって心配している人がいるわけです。
麻衣:わっ!じゃエゾミソハギが他の植物を殺しているってことになるのね!
陽人先生:はい。今日はその写真を用意しました。今話していたことがよく分かりますよ。

 

ファシリテーターとしての先生】
麻衣:先生、「エゾミソハギ」って何ですか?聞いたこと無い。
陽人先生:麻衣さん、いい質問だね!「しるべきもの」リストに加えられそうですね。はい、ではエゾミソハギを知っている人はいますか?
詩乃輔:よく分からないけど、植物じゃない。ガマの話もあったし、そういう植物はここら辺だとよく見るし。
若大:先生、インターネットでエゾミソハギを調べてもイイですか?
陽人先生:もちろん。すぐに分かりそうですね。
武:そこには、いつもお父さんと釣り行っています。たぶんその植物も見たことあると思う。背が高くて、上の方に紫色の花が咲いていました。その植物ですか?
陽人先生:えぇ、おそらく今話しているまさにそれだと思いますよ。
若大:あっ、あった!写真がある。エゾミソハギは、ユーラシア大陸の湿地に分布する植物で、1800年代にアメリカに導入されたって書いてあります。
麻衣:あぁ、いい情報ね。多分エゾミソハギについては、「しっていること」リストにもう移しても良さそうね。
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いずれも優れた先生であることに間違いありませんが、後者の先生は多様な生徒のチカラや経験を引き出すファシリテーターとなっており、登場する生徒も増えています。さらに注目したいのは、ファシリテーターとしての先生は、同時に専門家であることです。よりよい学びの場作りをするためには、ファシリテーションの考え方は確かに必要かもしれませんが、教科の専門家ゆえに出来る焦点を絞った指導や引き出し方、場作りができることを忘れないようにしたいところです。

 

これから増えるであろう対話形式の出題で、先生がどちらの立場で描かれているかを見るのも面白そうだと感じました。

 

【参考文献】

TOM J MCCONNELL et.al. (2016)「PROBLEM-BASED LEARNING IN THE LIFE SCIENCE CLASSROOM K-12」NSTA

https://www.amazon.com/Problem-Based-Learning-Life-Science-Classroom/dp/1941316204