チームで学ぶ!高校生物

“アクティブラーニング型授業”実践、職員研修の記録

全職員で目指す生徒像を考えるためのワークショップ②~校内ルーブリック研修会~

前回は、全職員でKPT(Keep、Problem、Try)というフレームを用いたワークショップを実施しました。ここでは、日頃感じていることを振り返りながら言語化していただき、グラフィックにすることで見える化を図りました。学校全体から目指す生徒像を探ることを目的としてワークでした。

http://albio.hateblo.jp/entry/2017/10/30/001635

 

今回は、ルーブリック作成を通して各教科で目指す姿を考えるワークを行いました。ここでは、先生方の想いを共有するような場となればという意図もありました。

 

【事前準備】

・前回のワークで作成したファシリテーション・グラフィックを文字に起こし、テキストマイニングでデータ分析を行い、全体像を把握できるようにしておく。さらに、すべての意見に目を通した上で、ループ図で集約し、負の循環が起きている部分など、現在の学校で起きているパターンを見える化しておく。

・先生方には「学習する学校」第5章の実践で紹介してある「観察し記録できる知的成長16の特性」を事前に読んだ上で、教科で伸ばせる・伸ばしたい特性3つを選んで来てもらう。

 

【当日の流れ】(2時間)

①挨拶・前回のワークの紹介(12分)

見える化したものを使って、要点を抑えながら簡潔に説明する。その後、グラウンドルールも確認(自他の尊重、秘密厳守、プロセスを楽しみましょう)

※スクール形式、教科ごとに座る。

②チェックイン(6分)

…名前(ニックネーム)、ワークショップにどう臨みたい?、体調、カタルタを引いて一言

③評価の目的やルーブリックについて解説(20分)

(1) ペーパーテストも含め、テストは本来人を伸ばすためにあることを確認

(2) ルーブリックの特徴を解説後、実際の活用場面と利点・欠点を示すために「インタラクティブ・ティーチング」の動画を視聴(12分の動画の内6分を利用)

(3) シングルポイント・ルーブリックおよび階段状ルーブリックの紹介

④進め方解説・移動(8分)

⑤観点の選択と教科内共有(10分)

…16の特性から3つを選んだ理由を簡潔に教科内全員で共有する。

⑥小グループに分かれる(3分)

…似た特性を選んだ者同士でグループを作る(3~6名程度、マグネットテーブル)

⑦基準作り(45分)

…特性を観点として、その観点において3年生終了時を考え、5段階中の4程度の姿を基準として練り上げる。ここを起点に逆向き設計で2年次、1年次終了時点の基準を同様に練り上げる。この作業を3観点について行う。

⑧全体共有(5分)

…本来は、ここでは、それぞれ作成したルーブリックをもとに、高校生時代を思い出しながら体験会を実施する予定でした。しかし、時間の都合上、全体を見て回る活動としました。

⑨チェックアウト(5分)

…気づき、今感じていることを小グループで共有。

⑪スケジュール説明・総評(5分)

…これからのワークショップ等のスケジュールおよび管理職よりコメント。

 

先生方が大切にしていること、教科が置かれている現状などについても知ることができました。また、各教科で大切にしたい観点も浮かび上がるのと同時に、各教科で共通して多く挙げられる観点(観察可能な知的成長の16観点より)が浮かび上がってきました。各教科で目指したい生徒像を、前回とは違う形で探すことができました。さらに、その要素は前回のワークで作り上げた生徒像を支えるための大切なものであることも見えてきました。

 

今回作成したルーブリックは、生徒の主体性を尊重すること、生徒像を探るという目的で実施したこと、限られた時間での作成ということで、シングルポイントおよび階段状(各学年での到達点)のルーブリックを利用しました。もしブラッシュアップする機会があれば、次のような視点を示したいと感じました。

 

①基準は、実現可能なものなのか?

②生徒の実態にあっているか?

③基準は生徒に伝わる言葉になっているのか?

④基準を実現するための手立ては継続的なものなのか?

 

前回よりとは異なり、関心が似た小さなグループにしたことで、議論もより活発化していたように感じました。ワークを通して、教科間また教科内の差異が可視化されるとともに、3年間継続的に教えられない教科との連携や育む力の見える化など、よい意味での新たな課題も見えてきました。

 

ルーブリックについては図書館の目標設定などにも利用したいという意見が出されたり、教科間のコラボとの話などが出てくるなどよいキッカケにもなりそうな予感です。

 

【参考文献】

Jarene Fluckiger (2010) 「Single Point Rubric: A Tool for Responsible Student Self-Assessment」Delta Kappa Gamma Bulletin, Vol.76(4), 18-25

(ワークショップの土台となる論文で、シングルポイント・ルーブリックが紹介されている)

E.FORUM 教育研究セミナー(2015)「高等学校における探究の評価 高等学校における探究の評価」京都大学吉田キャンパス http://ocw.kyoto-u.ac.jp/ja/opencourse/113

(ルーブリックの基本について紹介するときに利用)

吉田 新一郎(2006)「テストだけでは測れない!人を伸ばす「評価」とは」生活人新書

(今回のワークショップにおける評価についての考え方の根本に置いた本)

鈴木雅之(2011)「ルーブリックの提示が学習者に及ぼす影響のメカニズムと具体的事例の効果の検討」日本教育工学会論文誌35 (3) 279−287

(知人の地理の先生に教えていただいた論文。ルーブリックの効果についてのデータを利用)

東京大学FD(2017)「インタラクティブ・ティーチング ナレッジセッション WEEK 6 学びを促す評価」東京大学 http://www.utokyofd.com/mooc/contents/knowledge/week6

(ルーブリックの運用と、利点・欠点について動画で紹介)

ピーター・M・センゲ(2014)「学習する学校 子ども・教員・親・地域で未来の学びを創造する」英治出版

(5つのディシプリンを利用。また、理知的行動の特性を利用)