チームで学ぶ!高校生物

“アクティブラーニング型授業”実践、職員研修の記録

2015IAEVG国際キャリア教育学会に参加~アジアにおけるキャリア教育~

2015IAEVG国際キャリア教育学会に参加してきました。私は、高校生物におけるアクティブラーニング型授業の設計とその授業と社会人基礎力との関連について発表をしてきました。ここでは「アジアにおけるキャリア教育」を中心に、報告をします。

 

【日本】

世襲制であった第一次産業に就く若者が減少を始め、職業選択の必要性が生じるようになり、就業指導が行われていた。戦後には、プロセスを重視する進路指導が掲げられたものの、受験指導へとシフトしてしまった。そこで、自己理解と進路情報について、キャリアカウンセリングや体験学習を通して理解を深め、次のステップへと進めるようにするため、総合的な学習の時間が設置された。さらに、社会的自律に向けて、コンピテンシーや態度に注目する新しい「キャリア教育」が定義されるようになる。これからの課題として、2060年には人口が2/3となり、職業人も1/2となる。一人ひとりのパフォーマンス向上の必要性がある。

 

ニュージーランド

日本と似たキャリア指導の変遷があった。キャリア教育に毎日一番関わっている家族や保護者へのキャリア教育に関する情報提供は十分であるか?と問題提起された。同時に、キャリア教育を推進する際のリーダーシップについても紹介された。(リーダーに必要な力)①他者が可能と思える範囲を変える、②他者に思いを伝える力、③証拠よりもまずは信念や直感、④言葉を実現する力、⑤違いを乗り越えるため他者を理解する力

 

シンガポール

欧米の影響を受けたキャリア教育が発展している。個々のキャリア開発が国の発展に直接繋がるという考えのもと「Skill’s Future」という新しいプログラムが実施されている。例えば、政府が25歳以上の者にスキルアップのために500ドルを支給したり、体系的なインターシップが行われたりしている。また、未来に向けたキャリア教育やガイダンスも進めており、ICTを活用したe-ポートフォリオなどが考えられている。また、単純なボランティア活動ではない、社会貢献のために学ぶ、学ぶために社会貢献をするということを循環させる「サービス・ラーニング」の重要性も語られた。

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インドネシア

西洋文化思考のキャリア教育と東洋文化思考のハイブリッドモデルとしてのキャリア教育の重要性が伝えられた。インドネシアでは、300以上の民族が暮らしており、多様性があるが、概ね3つのパターンに分けられること、国として統一した哲学が存在しており、それがキャリア教育にも影響を及ぼしていることが確認された。

 

【韓国】

若い世代の労働市場が芳しくない。PISAテストでは、数学・理科のスコアは高いが情緒は低い(日本の方がもっと低いようだ!)。これまでは、高学歴で大企業に入ったものが成功者という富士山モデルであったため、地域の成功者をキャリア教育に協力してもらう際に、人材不足があった。これからは、様々な成功者が出る(ピークをたくさん持つ)ヒマラヤモデルに移行していく必要があると話された。

 

【インド】

キャリア教育は始まったばかりである。今まで人々の多くはワークとして、師弟制度によって仕事をしていた。消費をしないと経済が減速するといった、先進的な考えのもと自らの強みと社会のニーズをすりあわせて働く際に、キャリア・カウンセリングやガイダンスが必要になるのではと提唱された。さらに、伝統的な仕事をしていたものを先進国のアウトソーシングのための工場などに無理に引き込む必要はあるのだろうか?文化に根付いたキャリア教育が必要ではないか?とも伝えられていた。

 

アメリカの研究者から、仕事における次の3つの態度が紹介されました。

①仕事Job…お金を得るための手段

②キャリアCareer…目標達成の手段

③天職Calling…内在的価値を感じる

天職がわかっている人は、それを目指すためによく生きる傾向にあったり、様々な面での満足感が高く、パフォーマンスも高い傾向にあるそうです。アメリカでは、キャリアプランニングやカウンセリングなどの専門職の方が配置されており、仕事に対する態度を捉え直すための支援も行っているとのことでした。

 

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授業を通し、汎用的能力の向上を目指すことはもちろんですが、生徒一人ひとりが自らを知ったり、天職について考えられたりできるようなカウンセリングとガイダンスを実施していく必要性を強く感じました。日本でもキャリア教育推進法が成立することで、自治体によるキャリア教育のための計画が立てられ、高校でもその活動が進められるそうです。また、先進的にキャリア教育を時間割の中に組み込んでいる学校や自治体もあり、その流れが広がる中で、PBLを含めたアクティブラーニング、サービス・ラーニングなどが今後のトレンドとなるように感じられました。