チームで学ぶ!高校生物

“アクティブラーニング型授業”実践、職員研修の記録

ディスカッション中心の学習(バイオテクノロジーにてLTD)

バイオテクノロジー分野と関連して「デザイナーベビー」について、LTD(Learning Thorough Discussion)の手法をアレンジして話し合いを中心に学習を進めました。

 
【手順】
① SF映画「GATACA」を見て、近未来でのデザイナーベビーに関する話題を紹介し動機付け(http://www.amazon.co.jp/dp/B000062VQP
② デザイナーベビーに関する記事を読み全体像を把握(Step1全体把握)
③ 気になる重要語句を簡単にまとめる(step2ことば調べ)
④ 知識や自己との関連づけ(Step5、6これまでの授業の内容や自分自身との関連付け)
   (1) 文章の内容を選択。持っている知識や自分自身のことを選択。 
   (2-1知識) 2つを比較して、類似点や相違点、明確になった点やあいまいになった点などを書く。
   (2-2自己) 自分自身について思い出したり、考えたりしたこと、将来のこと、新たにやってみようと思ったことなどについて書く。
⑤ 話し合い活動と発表
⑥ 感想・リフレクション

【生徒の関連づけ】
・日本では赤ちゃんに障がいがあるかどうかの検査があり、遺伝子操作まではいかないけど、似た側面があるように感じます。
・動物でデザイナーベビーが出来ないのかと思いました。飼い主の希望で、動物の寿命を伸ばすなどが出来るのでは。
・遺伝子解析の技術を利用して、精子と卵のDNAの塩基配列を見て、特徴を見つけているのかな?と思いました。
・デザイナーベビーは、野菜などを遺伝子組み換えをして、環境などに合うように品種改良することと似ていると感じました。
・受精卵の遺伝子操作をすると書いてあるのを読んで、ガンダムSEEDのコーディネーターを思い出した。親がこんな子どもが欲しいと注文をつけて生んでいた。
・自分だったら、子どもは絶対にデザイナーベビーにします。皮膚が弱かったりなど遺伝をさせたくないからです。
・子どもは出来るだけ健康にという気持ちはわかりますが、自然に産みたいと思いました。
・パーフェクトなベビーを作ったとしても、自分の子どもだと愛情をキチンと注ぐことが出来るのか心配です。
・デザイナーベビーがオリンピックに出るようになると目的が変わってくるようになると思います。つまり、優勝したデザイナーベビーを生み出した医師が有名になり、そこに人が押し寄せるなど、別の技術の戦いになるのではと感じました。また、その記録が本当にふさわしいものなのか疑問です。
・人工中絶と受精卵を選ぶこととは何が違うのか分からないと思った。

【生徒の感想】
・遺伝的な部分もあるけど、周りの環境も大事だと思います。普通の遺伝子でも良い環境にいれば良い方向に育つと思います。
・赤ちゃんのデザインはともかく、病気になる確率を減らせるというのはとても喜ばしいことだと思います。
・技術の発展は望ましいことだと思いますが、進み過ぎは何があるかわかないので不安な面もあります。また、将来どのような世界になっているか予想できないです。
・デザイナーベビーが増えると福祉の仕事や看護の仕事が減少しそうだと思いました。
・遺伝子差別などの新しい差別が生まれたり、自然に生まれた人によるヒガミが強くなったりしそう。
・どんなに遺伝子を組み換えても完璧な人間が出来るわけではないと思います。
・自分が知らないところで、こんなにも科学技術が発展していることに驚きました。一生背負っていくものを親が勝手に決めていいのかと思いました。
・生命を軽く見られるような社会になるのではと思いました。完璧な人間は要りません!
・人間がさらに増えて、環境破壊などがさらに進むのではないかと思いました。規制を設けるべきだと思います。
・クローンのように同じような特徴を持った人間ばかりになっていき、ロボットのような集団になるのではと不安になりました。
・生命を商品の用に扱うのは反対です。
・病気になりにくい人が増えることで、ウィルスも対抗して強くなり、デザイナーベビーの人たちは大丈夫でも、普通の人がそのウィルスの影響で病気がひどくなるのではと感じました。

 話し合い活動では、途中で一度切って数班に発表をしてもらいました。まず個人でしっかりと考える時間を取ったことで、いろいろな視点からの意見が出ました。ブレストをする際にも、最初はあえて話し合いをしないようにすることで、他人に影響されず自分の考えを深める時間を確保するそうです。さらに、全体の意見を共有する際には、傾聴できる雰囲気と受け入れる姿勢をクラス全体で作ることを伝え進めていきました。その後、問題になることについて、残り時間で話し合いをしてもらいました。社会や自分自身と結びついた課題と感じてもらえたようで、話し合いも活発に行えていました。さらに精度の高い質問による介入が行えるよう、私自身勉強を進めていきたいと感じました。

【参考文献など】
安永 悟、須藤 文(2014)『LTD話し合い学習法』ナカニシヤ出版
朝日新聞デジタル(2013.10.20)『デザイナーベビー? 遺伝子解析、好みの赤ちゃん 米で手法特許、倫理面で批判』http://www.asahi.com/articles/TKY201310190592.html
中島久樹(2015)『振り返りの手法紹介:KPT法』リフレクション研究家ナカシマノブログ