チームで学ぶ!高校生物

“アクティブラーニング型授業”実践、職員研修の記録

【読書の記録】『2020年からの教師問題』

2020年に向けてどう学校教育はどう変わっていくべきなのか、石川さんの経験も交えながら分かりやすい文体で紹介されています。本を読み進める中で、日本の教育における変遷やその背景、これからの教育改革の先やその際の障壁などにも思考整理をすることができました。

 

また、創造性、哲学、クリティカルシンキングの重要性についても言及されており、最近の関心事とピタリと一致しました。

 

特に『自分軸づくりを支援する教育』については、私自身も「生徒が本来の自分らしくイキイキと生きて欲しい」を長期のテーマに、教育実践やリフレクションに取り組んでおり、グッと来ました。

 

ここでは、自分軸探しには「自分にとって知識はどう役に立つのか」などの自問自答が必要なことが述べられています。

 

さらに、正解の無い問いへの向き合い方がについて、そのステップが紹介されています。①問いに対する不安感や答えを出した際の不完全燃焼感を持つ(モヤ感)、②幾つかの答えを論理思考にて検討(クリティカル・シンキング)、③最後は自分軸にて答えを出す、という流れです。理想的な流れだと感じました。

 

現在の看図を利用した授業では、おおよそ次のように進めています。

http://albio.hateblo.jp/entry/2015/03/03/230225

①曖昧性の高い写真にてモヤモヤ感を生む

②個人思考→グループで意見を出し合う→納得解を得る

③解答の文章を読む→他の知識や自らとの関連づけを考える

 

この流れに近いところはあるかもしれませんが、自分軸を形づくっていく、クリティカル・シンキングのツールと組み合わせるという部分では、さらに工夫ができそうだと感じました。

 

また、鈴木克明先生に教えていただいた『学生の認知発達段階』とも一致する部分もあり、興味深かったです。

http://albio.hateblo.jp/entry/2016/11/13/001524

①二元論:良いか悪いかで決める、②多元論:答えを探している段階では、誰もが多様な意見を持てると考えるが、その解答は探索中。③相対主義:すべてのものは意味があるが、対等でなく、証拠や論理に基づくと考える。④コミットメント:信念や関係性、仕事などを、どのようにまたなぜそうするのかを、自らの意思で決定できるようになった段階にある状態。)

 

理科でも、この本で紹介されているプロセスをたどる授業は、工夫次第で実現可能だと感じています。来年度の実践に向けて、丁寧に各ステップについての理解や手法を強化していきたいと考えています。

2020年からの教師問題 (ベスト新書)

人権教育LHR~ロールプレイ×ジグソー法~

3年生最後の人権教育LHR。まとめとして、結婚差別をテーマに授業を行いました。生徒たちは、2学期の終わりに「将来、自分が家族を持ったとき、どのような家族を築いていきたいと考えましたか?」を事前に考えている状態でした。ここでは、ロールプレイを行い、差別の持つ性質について、主体的に気づき体感してもらうこと、行動に移していくをめざしました。

 

【授業の流れ】

1.理想の家族像と現状の差分を考える。

(問1)あなたの考える理想の家族を築く上で必要なものやことは何ですか?

(問2)あなたの考える理想の家族を築く上で欠かせないものやことのうち、現在足りないものは何ですか?

(問3)理想の家族を築く上で欠かせないものやことを手に入れるために、今またはこれからできることは何ですか?

2.これまでの学習のふり返りを簡単に行う。

「差別とは、自分にとって一番身近な人との関係を断ち切ってしまうものである」ということについて、講話の内容を紹介

3.ロールプレイ

(1)結婚差別に合う私と相手、私の父、母の4名になる(3名班は、母無し)。

(2)地元の実話の文章の前半を読む。その後、班内で配役を決定。

(結婚を希望する私と部落出身の相手が、相手の両親から結婚の了承を得た上で、結婚を反対している私の両親のところへ出向くところまでを示す)

(3)その役の思いや人柄を個人で考えた後、同じ役の者同士で集まり、人物像やセリフを出し合う。

(4)もとの班に帰り実演(ジグソー法)

≪ロールプレイのルール≫                                                     

・登場人物になりきって思い切り演じる。                                  

  ・演じている役として、また役に対する発言に止める(演じている人自身を否定しない)

 

 

最初の理想の家族像との差分を考えるところでは、お金や家といった物質的なものから、相手を尊重する気持ち、コミュニケーション力などにも言及がなされていました。

 

ロールプレイでは、3分半程度様子を見て、難しがる生徒も多いものの、しっかりと考えながら進めている班もありました。そこで、後半は全員でひとつよく進行している班を観察する活動を入れることとしました。なお、私は母親役でサポートに入りましたが、ほとんど介入する必要はなかったです。子を思う穏やかな父親が反対する理由をしっかりと説明し、子もそれに対する反論を述べ、和やかながらも集中した空気感の中で話しは進みました。最後は話し合いが決別し、終了となりました。

 

授業の最後に、教師自らの経験を語り、リフレクションとなりました。ここでは、時間をかけて緩やかに和解をしていく実話の後半部分も文章にて紹介しています。

 

生徒たちは無言で文章を読んだあとは、チャイムがなってもずっと感想を記入をしており、教室から出た後もクラス全体が休み時間いっぱい記入をしている様子を窓越しに見ることが出来ました。

 

目指す家族像を築く要素のひとつとして、これからも人権感覚を磨き、豊かな人生を送って欲しいと思います。

【沖縄】教育改革推進フォーラムで授業実践

沖縄にで、産業能率大学主催の教育改革推進フォーラムで、生物の授業をして来ました。授業に参加していただいたのは、主に生物の先生方でした。他教科からの参加もあり、ありがたかったです。範囲は、生物の「異種生物種間の関係」を扱いました。

2回目の登壇となるため、前回からブラッシュアップして、次のことを意図して授業を作りました。

①参加された方が少しでも試してみたいというツールを見出していただけること
②ALのマインドを体感していただくこと
③生物をALでやる意義を暗に示すこと
④通常授業と同じ形でやること(重視)
⑤参加者を信じ、チャレンジして楽しむこと(モデルを使った思考など)

 

【授業の流れ】

0.休み時間に、カタルタを各班に準備してアイスブレイク

1.授業の目的・目標をKP法で示す

2.それぞれの目標をシートに記入(OPPA)

3.看図アプローチ×旗揚げアンケート

4.KP法で、学習内容のアウトラインを説明

5.ベン図を使った思考(共生と寄生について記述)

6.ミニジグソー法(内容を分割して説明し合う)

7.矢印モデルを使った思考(共生と寄生について記述)

8.リフレクションカードを利用したグループ内のふり返り

9.個人でリフレクション(OPPA)

 

思いがけず、振り返り会の30分も自由に使って良いと伺い、用意していただいたものを活用しながら急遽次のように進めました。

 

【振り返り会の流れ】
①良かった点、質問の付箋を受け取り、その場で4象限に分類(休み時間5分)
※小林先生の授業見学シートの項目を利用(しくみ、仕掛け、教え方、支え方)
②授業の意図を話す(12分)
③②で回答できていない質問に答える(3分)
④グループでPKT(ペチャクチャタイム)(8分)…さらに理解を深めるための質問orコメントを考える活動
⑤A4用紙1枚に班の代表意見を記入し、前に貼り共有、回答、参考文献や学習会の紹介(2分)

 

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【感想(抜粋)】

◯様々なツールがあり、勉強になりました。ぜひ取り入れられるところから取り入れたいです。

◯いろいろな考えを知り、まとめるという作業がとても面白かったです。

◯話し合うことで新しいアイディアが生まれ、だんだんと形になっていった。その過程が楽しい!

◯リズム、仕掛け、テンポ素晴らしかったです。

◯実際の(通常)授業を体験できて良かった。

◯カードを使うことで生徒はワクワクして体験できると思います。

◯最初に目的や目標を示すことでしっかりと取り組む姿勢ができる

◯生物の関係性を記号や矢印で単純化し、図示するアイディアは理解を深めるのにとても有効だと思いました。

◯矢印の問いはわかりにくいからこそいろいろ意見が出ておもしろかったです。

◯導入のクイズが授業内容の動機付けとして有効だと思いました。

◯生物のセリフを考えるアイディア楽しかったです。

◯互いのことを尊重して授業をすることができるので良いと思います。

◯やるべきことが時間ごとに細分化されていて、集中して取り組みに参加できる。

◯すっと入ってくる展開がよかった。

◯手品のように様々な手法を使い分けられてました。職人ですね。

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矢印モデルは、矢印にどういう意味を持たせるかという前提から考えていただくというチャレンジ問題でした。ループ図やベクトル、XY座標など多様な方法で表現していただきました。ここでは、生態系全体としてバランスを保てていること、そこへのヒトの関わり方などに言及するオープンクエッションにつなげました。特にこの部分は、楽しみながら授業をしていました。

 

最後には、各班から1つ質問やコメントを出していただきましたが、深い問いでよい場作りができました。授業では、短時間でさまざまな活動を入れるというタイトな流れでしたが、参加者のみなさんが楽しみながら参加していただけたこと嬉しく思いました。

 

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生徒に実施する際には、問いをさらに焦点化してみること、リフレクションカードの使用法のアイディアなど私自身も楽しみながら、気づきを得ることができました。

 

この場にまた呼んでくださったこと、たいへんありがたく思います。また、授業づくりのアイディアをいただけた先生方、このフォーラムでまた新しいつながりができたこと、参加されたみなさんに感謝したいと思います。

 

【参考文献】

小林昭文『ケース別 授業実践の悩みはこう解決!』

キャリアガイダンス vol.405 2014.12

「アクティブラーニングで変わる 授業と生徒の未来」より

http://souken.shingakunet.com/career_g/2014/12/vol405201412-3a96.html

 

単元終了時KP法で発表会~内容整理のために~

KP法での発表会を試験前に行うことで、知識の整理ができて効果的であったという話しを伺い、私も実践してみました。KPJ(紙芝居プレゼンテーションジグソー法)で行っています。

 

【授業の流れ】

1限目

①教科書のある単元を4人グループ内で、4分割し(A~D)、担当箇所を決定

②同じ範囲を担当する者同士でグループを再編成(例 Aグループ)

③個人でKPでシート(B5サイズ…ファイルに挟める)を作成

 ※同じ部分を担当している仲間が隣近所にいるため、必要に応じて相談する

 

2限目

①それぞれの班で順番に発表を行う

※ホワイトボード両面、前の黒板を2分割、ステンレステープでの簡易ホワイトボードなどを使い班の数、発表できる場を確保

※1班…ホワイトボード、長机1台、椅子3つ

※発表4分、フィードバック用紙(A6)記入1分(最後の班が発表を終えてから1分を計る)

②班内でフィードバック用紙(良かった点と愛のある指摘)を発表者に返す

③最後に個人でリフレクションを行い、シートに気づきや感想、次回頑張りたいことを記入

 

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1つのKPセットを一緒に作る作業も効果はあると思いますが、今回は単元終了後の内容整理であることを踏まえて、個人で作成するようにしました。同じ範囲を担当する者同士で集めていましたが、作業に集中しているため、ときどき相談が起きる程度となっていました。ここでは、発表会前に違うグループの内容をお互いに見合うことがないようにすることも意図しています。

 

この活動が2回目となるクラスでは、1限目だけでほとんどの生徒がKPセットを完成させており、また前回の反省を活かした工夫も見られました。

 

生徒はよく集中しながらも発表会のときも楽しみながら取り組んでおり、定期的にこの活動を入れていくことで、通常の授業時のまとめや発表にも良い影響を与えるように感じています。

 

 【参考文献】

川嶋直、皆川雅樹(2016)『アクティブラーニングに導くKP法実践: 教室で活用できる紙芝居プレゼンテーション法みくに出版

共感的コミニュニケーション×校内人権教育研修

共感的コミニュニケーションスキルとして、校内研修で非暴力コミュニケーション(NVC)を扱いました。まず差別の原因として予断と偏見があることを看図アプローチにて紹介。

 

ここを乗り越えるためには、他者また自己との対話が大切であることを確認しました。コミニュニケーショントレーニングのひとつとして、NVCの考え方を紹介後実際にグループでの体験をしていただきました。

 

【研修会の流れ】
①チェックイン…名前、体調、今の気持ち
②アイスブレイク…共通点探し
※ここでは藤原和博氏の方法を利用
http://logmi.jp/167606?pg=2
③解説…感情の正体(ニーズ)が分かると次の行動(リクエスト)が分かることを確認。
④グループ活動。まず1人が「イライラしたこと」を話す。他のメンバーは、感じたことを返し、感情を探る。その後、ニーズについても探る。
⑤④を他のメンバーでも実施
⑥チェックアウト

短時間でかなりタイトな時間での実施でしたが、ニーズに繋がる感覚までいきつけたグループもあったようでした。何よりも、職員の共通言語や概念としてNVCが使えるようになり、良かったです。生徒向けの授業にも取り入れていけたらと思います。

 

【参考文献】
NVC JAPAN「感情とニーズ」http://nvc-japan.net/material/feelings_needs_list/

一枚ポートフォリオ評価(OPPA)とリフレクション会

OPPA(One paper Portfolio assessment)の裏面とリフレクション会について紹介したいと思います。

 (参考:表面 一枚ポートフォリオ評価(OPPA)と思考ツールを活用した導入 - チームで学ぶ!高校生物

 

まず、授業の目標を立てる項目があり、授業のスタート時に前回のふり返りを参考にしながら、記入をします。学習終了前のリフレクション時に、5項目についてふり返りをします。

 

ここの項目は、「共通の目的達成度の5段階評価」「態度目標のチェック」「個人の目標がどのような場面で達成できたか?」「次回はどのように取り組みたいか?」「授業に関する感想、要望、意見」となっています。

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さらに、単元終了後には、全体を振り返って感想や気づきを記入する欄を設けました。

 

この部分に記入する前には、グループで集中的にふり返りが行えるように、ワークショップ形式でリフレクション会を実施してみました。

 

利用したのは、中島久樹さんの「リフレクションカードPersonal」の問いと、現在研究開発中のAL用の問い(No.2)です。

 

4名グループになり、まず1人が主人公となり、他の3名はサポーターとなります。まず主人公が、スタンスのカードから会を進める際のレベルを選びます(例 優しさを大事に)。次にサポーターが、No.2のカードから1枚ずつ選びそのカードの問いを尋ねます(例 今回の学びに点数をつけると?)。主人公は、しっかりとふり返り答えと理由などを答えていきます。時間いっぱいNo.2を繰り返します。時間が来たら最後に、サポーターがNo.3のカードから主人公の発言から感じたことをフィードバックしていきます(例 主人公のエネルギー源は何だと感じましたか?)。

 

【生徒の感想より】

・リフレクションを通して、自分自身やメンバーは以前に比べて成長しているんだなとおおいました。

・質問のカードがあることで、色々な質問ができた。

・自分にない答えをしていて、相手の意見を尊重することは大事だと思いました。

・友達がどんな思いを持って、また何を大事にして勉強しているのかを知れて良かった。

・みんなよく私のことを見ているなぁと思った。

 

最初は、恥ずかしがっていたグループも進めるにつれて、しっかりと参加してる場面も見られました。この活動の意義を感じてもらいながら、会の進行についてもさらに深められるよう支援をしていきたいと感じました。なお、No.2の質問は、10月に地元学習会で行った際の成果から抜粋したりアレンジしたもので、現在中島久樹さんと検討、実験を進めています。来年あたりにはプロトタイプが示せるかもしれません。お楽しみに!

 

【参考文献】

中島久樹「リフレクションカードPersonal」http://hisa-magazine.net/rcard-p/

一枚ポートフォリオ評価(OPPA)と思考ツールを活用した導入

知り合いの生物の先生に教えていただいたOPPA(One paper Portfolio assessment)、仲間内で小さな流行でした。

 

1枚の紙にふり返りをまとめて行く方法で、まず学習前の知識や興味を書いてもらい(診断的評価)ます。そして、各授業の終わりで、学んだことを書いてもらいます(形成的評価)。最後に、学習前に聞いたものと同じ問いを学習内容を踏まえて記述してもらったり(総括的評価)、感想を含めて記入をしてもらうというものです。

 

1枚の紙に学習過程を見える化をすることができるたいへん便利な方法です。また、リフレクションを残していくことができます。

 

私は、表面に学習内容のふり返りを、裏面に学習プロセスのふり返りを書けるようにしています。今回は表面について。

 

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また、学習前の診断的評価については、下手すると「知識が少ない」ということを確認するだけの活動となる可能性もあるため、ここについても次のような方法で進めることもあります。

 

例えば「ヒトの眼と何かの共通点と相違点をベン図に書いてみましょう」という課題を出します。すると、鏡、スマホなどさまざまなモノと比較をはじめその特徴について深く考えています。ここでは、個人で活動したあとにグループで一緒に活動をしていくようにしています。場合によっては、「生物発光」というテーマだけを与えて、マインドマップのように広げていく活動を入れたりしました。

 

積極的に診断的評価となる対象に向き合うことができており、動機付けにもつながるように感じています。課題としては、やや時間がかかってしまう場合もあったため、さらに効果的に実施できるようブラッシュアップをしていきたいと思います。

【参考文献】 教育評価の本質を問う 一枚ポートフォリオ評価OPPA 授業と評価をデザインする 理科―質の高い学力を保障するために