チームで学ぶ!高校生物

“アクティブラーニング型授業”実践、職員研修の記録

【自律的学習者育成のために】『Academic TRANSFORMATION: The Road to College Success』

今回は精読でなくプロアクティブリーディングという方法で読んでみました。 

 

この手法は、精読前読書法として知り合いの英語の先生の方が考案されている方法で、数ページを読みながらノートやA4用紙1枚に次のことをまとめます。①『読書の目的』、②著者のこと、③ざっと流し読みをして気になった単語、④数ページを選び(6ページ程度)気になった単語、⑤その単語を中心にまなんだこと、⑥振り返り

 

この手法は、動機付けおよび書籍の概要把握にチカラを発揮します。自分の言語化されない部分の関心と本を繋ぎ、さらに読みたいという気持ちにもなる、興味深い設計となっています。

 

通常ならば、ワークシートを作りながら1冊を読むのに、30分程度でも終わると思います。今回は『Academic TRANSFORMATION: The Road to College Success』という洋書を使ったためやや時間はかかりましたが、いくつか気になる点を洗い出すことができました。

 

気になったいくつかのポイントを示したいと思います。

 

◯リフレクションは、世の中を洞察し、改善していく重要なスキルである。
クリティカル・シンキングを行う人の3分類
…unreflective thinker(受動的な者)、novice thinker(初心者)、advanced thinker(自律者)
◯関心があり自発的に学習する状態↔形式的に決まったものを学習されている状態
◯良い読書を阻害する要因①語彙力(支援方法:フラッシュカードで補う等)、②集中力(支援方法:10分ごとに読んだ段落を数え、ポイントを言うセルフテストを実施。20分ごとに5分休憩)
◯脳は、人や文章、デジタル媒体を通して、常に脳内にマップを作り続けている。
◯スマートなゴール(SMART goals)とは、明確で(Specific)、測定可能な(Measurable)、到達可能な(Achievable)、現実的で(Realistic)、タイムリー(Timely)なものである。
◯時間と仕事のマネージメントについて。時間管理は、ビジョンとスマートなゴールがスタートである。毎日入ってきた情報を全ての処理すること、今は何をするのがベストな時間かを問うことが大切。
◯学生の認知発達段階…①二元論:良いか悪いかで決める、②多元論:答えを探している段階では、誰もが多様な意見を持てると考えるが、その解答は探索中。③相対主義:すべてのものは意味があるが、対等でなく、証拠や論理に基づくと考える。④コミットメント:信念や関係性、仕事などを、どのようにまたなぜそうするのかを、自らの意思で決定できるようになった段階にある状態。

◯学習のスタイルは、才能や好みで決まる。リフレクションを行うことで確認できる。

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自律的な学習者に向かうための手法や理論、その発達段階(時間と手立てが必要)について体系的に記してある書籍。大学の授業をする者に向けて書かれたものであるが、自律的な学習者を育むことを目指す者として、さらに精読を勧めていきたいと感じた。

 

【参考文献】
De Sellers,Carol W. Dochen, Dr. Russ Hodges(2014)『Academic Transformation: The Road to College Success』Pearson, http://amzn.asia/dJUa8m4

【読書の記録】『公教育をイチから考えよう』~オンライン読書会へ~

今回2度の『公教育をイチから考えよう』を利用したオンライン読書会を行いました。

 

本書では、公教育は、産業発展のための人材育成といった固定的な価値観でなく、社会動向や未来のヴィジョンを見据えてダイナミックに変化していく必要があること、「よい教育」の原理や実践を現場で実装可能にするためには、教師だけでなく生徒、保護者といったあらゆるステークホルダーが知恵やチカラを出し合って行く必要があることが確認されています。官教育から、本当の公教育にしていくための力強い原理や、オランダでの実践を知ることができました。

 

特に貧困層への資金投入がしっかりと行われ、さまざまな尺度で生徒の成長を見ている姿勢は、日本のように富むものが塾に行き1つの尺度だけで成功か失敗かが決められる社会とはずいぶん違うなと思いました。

 

また、科学に慣れ親しんだものとしても共感できたのは、「教科書中心主義」は、AならばBというような単純化された思考を強化し、原因と結果がはっきりとしない現実社会の理解を妨げているという主張でした。

 

科学は人類が共通に紡ぎ上げてきた大切な文化であるという理解のもと、その知識を学んでいくのと同時に、完全な解答を示すものでも無いこと(納得解)、限界があることについても経験社会での学びを通して理解を深める必要があると考えています。この点については、「測定できる力から測定できない力へ」、「丸暗記から問いかける姿勢へ」という書籍で紹介されていた考え方にも実にスムーズにつながると感じました。

 

マイクロソフトは「個人業績」よりも、チームへの貢献度、チームとの協同、個人の成長に重点を置く人事制度に刷新すると宣言したそうです。このことは、個々が最大限の能力を発揮させることができ、幸福を求める自由が保障されたときに、持続的で意味のある発展を続けることができるという本書の主張と見事に一致していると感じました。

 

テストについても、序列をつけ他人と比較することに特化したものでなく、発展モニターに重点を置いたものにしていくことで、それぞれの子どもの特性を育むことにもつながるのだと感じます。そこで生じた多様性を認め合い、協同することで、全体が成長するというのは、まさに目指したい境地です。

 

ALをやっていると、自主や主体性は一気に身につかないこと、徐々に時間を掛けて変化していくことを経験することができます。私たち教師が時代や生徒の状況を見据え「自由の相互承認」を目指すためには、生徒や外部のソースを巻き込んだ授業づくりや学校づくりを時間をかけてでも着実に行っていくことが大切だと感じました。このとき、教員のチカラを育める環境づくりとともに、自由裁量権をいかに現場に任せるかということも、真の多様性を保証する意味でも重要になってきそうです。

 

まだ見ぬ社会かもしれませんが、その地平線の先を確かに示してくれる希望に満ちた1冊だと感じています。そして、この書籍を利用したオーサー参加型オンライン読書会も実施しました。自己矛盾を抱えながらも、果敢に挑戦を続ける仲間と出会い、対話をするという貴重な経験もできました。これからも迷いがある際には「自由の相互承認」に立ち返って進んでいきたいと思います。

 

公教育をイチから考えよう

公教育をイチから考えよう

 

 

話し合いおよび思考の活性化をねらいとした質問カルタ利用法②~導入時の活動編~

生徒の話し合い活動で質問カルタを利用した授業を始めました。

http://albio.hateblo.jp/entry/2016/10/31/003954

単元の導入時に、これまでの知識を確認したり、思考やイメージを広げたりする中で、新しい気づきや疑問をそれぞれに持ち、動機付けなどを行うひとつの活動として次のような活動を行ってみました。

 

1.テーマを示す。(例:生物の発光)

2.質問カルタを一人3枚引く。テーマとそのカルタの質問を結びつけて個人思考。(例:将来的にもずっとこの仕組みは存在するだろうか?)。OPPA(1枚ポートフォリオ)の最初の部分に記入。※OPPAの活用については、また記事にしたいです。

3.メインファシリテーター(話し合いを円滑にまわしていく)、グラフィッカー(B4紙に話し合いの過程を残す)、サポーター(他の2役をサポートしながら話し合いに参加)を各班3~4名を立てる。

4.テーマに沿って、それぞれの意見を出していく。このとき、グラフィッカーは、マインドマップを利用して、絵なども自由に使いながら記録をしていく。

4.話し合い後、各班での「気づき」「疑問」を、記録を取っていたB4紙の裏に記入。

5.それぞれ黒板にマグネットでマインドマップ側を貼付。クラス全体で、共有しながら、共通点や差異を簡単に紹介。裏返しながら、気づきや疑問点についても共有。

6.さらに個人での気づき、疑問点をOPPA(1枚ポートフォリオ)の最初の部分に追記。

 

それぞれの生徒が役割りを果たしながら積極的に話し合いに参加していました。また、クラス全体で、テーマに対する現在の理解や、さらに学びが必要な部分なども確認できて面白かったです。

 

ここでの気づきや疑問を持ち続けて単元を学んでいける工夫や、これらの総括部分で活かせる工夫もしていきたいと考えています。

話し合いと深い学びを促す質問カルタ利用法①~話し合い活動編~

生徒の話し合い活動では、クラスや学年などによってうまく場合とそうでない場合もあります。欠席者が出た際に、グループに混ざって活動をしていると、質問の出し方に差異があることに気づきました。

ここでは、あらかじめ話し合いを促す質問を準備していると、話し合いや思考を促すことができるのではないかと考え、理科用のカルタを作ってみました。

問いを独自に、3段階に分類して利用することにしました。まだまだ実験中ですが、ひとまず、レベル1は内容に関するもの(例:その例を出せますか?)、レベル2は関連づけを促すもの(例:最初のテーマとどのように関係しているでしょうか?)、レベル3は思考を広げる・深めるもの(例:それはどのようにして生じたと考えられますか?)としています。f:id:jugyo_coevolution:20161031003908j:plain

ジグソー法で利用する場合には次のような活用を行ってみました。
1.グループ内でひとりが発表する。
2.発表者に対して、レベル1のカード1枚を選んで、質問する(前に発表した人)。
3.1~2を全員が行う。
4.全員が発表後、レベル2のカードを選んで自由に話し合いを行う。この際、適宜他のカードを利用しても良いこととする。

質問の例があるため、質問をすることは確実にできるような仕組みとなっています。さらに、質問に対して、発表者だけでなく班員も考え緩やかに参加できるようにしました。質疑応答は活性化しています。さらに、深く考える時間も大切にしていけると良くなりそうです。

将来的には、カード無しで活動が出来るようになればと考えています。特に、このカードは納得解を作っていくのに適していると感じています。これらの問いが自然と身についていくことで、将来答えのない問いへ対峙し探求していくチカラも育めるのではと期待しています。

 

【参考文献】
Fabien van der Ham「DOORVRAAGKAARTEN」
http://www.filosofiejuf.nl/webshop/niet-gecategoriseerd/doorvraagkaarten/
※オランダの哲学教材(小学生用)

 

ネイチャーゲーム ~生物の用語に慣れ親しむ~

ヒトのホルモンについて、生物基礎の教科書では14個が紹介されています。日常生活で生徒が聞くものは少ないようで「知っているホルモンは?」という発問に対しては、成長ホルモンが出るか出ないかという状況でした。

ここでは、ホルモンの名称に慣れ親しんでもらうことを目的として、久しぶりにネイチャーゲームを実施しました。ネイチャーゲームを取り入れた授業実践については、前回同様知り合いの社会の先生のブログを参考にしています。

 

http://blogs.yahoo.co.jp/suzukifamilyeiji/63026319.html

http://blogs.yahoo.co.jp/suzukifamilyeiji/63224412.html

地元の希少生物について知ろう ~ネイチャーゲームに挑戦~ - チームで学ぶ!高校生物

 

【授業の流れ】

① 簡単に解説をした後、個人でホルモン名とホルモンが出される内分泌腺およびはたらきを一致させる(覚える)

② ペアで問題を出し合い、確認

③ ホルモンに番号を付けて、出席番号と一致するものを名刺サイズの紙に記入

④ 回収後、名札ケースに入れる。生徒は前を向いたまま、教員もしくは後ろに座っている生徒が前の生徒の襟にクリップで用語の入った名札ケースをつけていく

⑤ ホルモンなので、教室という体内を自由に?循環してもらう

⑥ 出会った友人と1つ◯☓で答えられる質問をして、そこから自分がどのホルモンになっているのかを類推していく

⑦分かった人から教室前方の教師に答えを伝えに行く。正解の場合は、ホルモンの名札を黒板に描いてある正しい内分泌腺の位置に貼りあがり

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一人でテスト前に覚えるのはツライ範囲だと思いますが、仲間と楽しみながら確認をすることができていました。動機付けとしても十分な手法だと感じました。

ストレス対処の特別授業 ~アサーショントレーニングとマインドフルネス~

ストレス対処の特別授業が行われました。対人関係スキルだけでなく、様々なストレスに実際に対処するための1手法を紹介したいと思い、マインドフルネスについての解説と実践を行ってみました。

 

【授業の流れ】

1.アサーショントレーニング(他部署の提案に沿って実施)(25分)

2.マインドフルネスについて解説と実践(15分)

3.共感的コミュニケーションスキルについて解説(実践は時間の都合上未実施)(5分)

4.ふりかえり(5分)

 

アサーショントレーニングについては、3つのステップで断る方法が紹介されていました(①感謝の気持ちを持って謝る、②私を主語に理由を述べる、③対案を示す)。また、いくつかのロールプレイも行いながら、体験的に学習できるようになっていました。「テスト前に自分も使用するノートを貸して欲しいと友達に言われた場合…」に断るというロールプレイ後、グーチョキパーアンケートで確認すると(パー:うまくいった、チョキ:まぁまぁ、グー:うまくいかなかった)、グーのペアが1つ…。ケンカになったと。そこで、うまくいった班の回答を紹介してもらいました。

(生徒の回答例)

①「ごめんね」

②「私も今日勉強するのに使いたいんだ」

③「帰ったらスマホで撮って送るね」

これならケンカにはならないだろうね、と確認ができました。

 

マインドフルネスの解説については、自らの経験なども交えつつ、生徒もアクセスし易いNHKスペシャル「キラーストレス」のホームページの記事を利用しました。ここには、トレーニングに利用する音声があるため、QRコードをプリントに印刷し、いつでもアクセスできるようにしました。トレーニングもよく取り組めていました。

 

【感想を一部抜粋】

・マインドフルネスを覚えてたまにやってみます。

・マインドフルネスをしたら頭の中を空っぽにして落ち着けた。

・マインドフルネスをやってみて、気分が落ち着いてリセットした感じになりました。忙しいときやキツイときに取り入れたいです。

・自分なりにリラックスできる姿勢を見つけようと思った。

・ストレスで頭痛や吐き気におそわれることがあるので、今日学んだことを実践していきたいと思いました。

・面接に追われてストレスが結構たまっていたけど、マインドフルネスをすることで少し気持ちが楽になりました。

・これからも役立つ内容で、生活の中に取り入れていきたいです。

・マインドフルネスをしたときに、今まであまり感じたことがない感覚を覚えました。あと、すごく眠くなりました。

 

これからの進路決定に向けた動きや、卒業後の新生活、さまざまなストレスを抱える生徒も多いと思います。生徒の反応もよく、紹介できて良かったと感じました。

 

【参考文献など】

NHKスペシャル、シリーズキラーストレス「第2回ストレスから脳を守れ~最新科学で迫る対処法~」http://www.nhk.or.jp/special/stress/02.html

地元でAL×特別支援講座を担当!

幼保小中高と様々な校種の先生方の連絡協議会に講師として参加いたしました。特別支援教育の視点については、参加者の方に持っていただき、私はほぼ通常通りの流れで研修会を進めることができました。

 

【ワークショップの流れ】

1.アイスブレイク(GCPおよび旗揚げアンケート、カタルタで自己紹介)

2.ALの背景、概要についてのワークおよび解説

3.AL体験(看図、ジグソー法)

4.特別支援教育の視点からの振り返り(えんたくん)

5.リフレクションおよびアクションプランの共有

 

【参加者のコメントより抜粋】

①AL体験について

・自ら学ぶ姿勢をもって勉強ができ、たいへん勉強になった。

・リラックスしているので、集中も思考もしやすい。

・主体的に取り組める。一生懸命に考えることができる。

ファシリテーターとしての役割が大きいと感じた。

・自分と異なる意見を受け止めたり、いろいろな考えを知ることができる機会になる。

②特別支援の視点から

・自由な発想を積極的に発表でき、互いを尊重しながら学ぶことができると感じた。

・よくしゃべる子は(発表で)おとなしい子は(文字で)それぞれが輝ける場をつくれる気がしました。

・発言が苦手な子でも周りの意見を聞きながら考えられるのは良いと思う。

・KP法では、視覚的な支援があり、いつでも振り返ることができる

・こだわりの強い児童生徒の考えも多様性のひとつとして全体に生かせる。

・自身のない子も楽しく学ぶ場が提供できそう。

・看図アプローチでは、学力差に問わず、学びを深めることができる。

・子どもたちが持っている隠れた力や才能を発見し、児童生徒理解につながる。

・参加が難しい子に対する手立てが必要になりそう。

 

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時間が2時間と短かったため、自分自身の実践については、授業の様子を紹介した記事を利用してジグソー法で実施しました。大阪での実践発表での反省を早速活かしましたが、うまく機能していました。

 

初めてのこともいくつかありましたが、担当の先生のサポートもあり、リラックスして研修会を行うことができました。さまざまなツールについても、好評でした。さっそく、学校でえんたくんを購入して職員研修に使いたいというお話も出ていました。今後、地元での活動も増やしていければ嬉しいです。